一般診療とは

一般診療

いわゆる産婦人科一般のことで、女性特有の症状や病気を中心に診察・検査・治療を行っていきます。具体的には、月経に関して何かしらの異常がある、子宮や卵巣に関係する病気の可能性がある、更年期障害、性感染症などが診療の対象となります。

当クリニックの産婦人科は女性医師が担当しますが、羞恥心や不安などをもつ患者様にできるだけ配慮した診察に努めております。診察の流れですが、まず1階受付にて問診票に必要事項を記入していただき、それをもとに医師が診察をしていきます。内診や腟鏡診をしていき、必要であれば超音波検査、がん検診、血液検査、おりもの検査などを行い、総合的に判断し、診断をつけていきます。

産婦人科でみられる主な症状(例)

女性医師
  • 月経異常(月経痛の症状が強い、半年以上月経がない、月経周期が短い・長い、月経持続期間が短い・長い、経血量が多い・少ない 等)
  • おりものの異常(色や状態が違う、悪臭がする、量が多すぎる、血液混入 等)
  • 外陰部の異常(かゆみ、腫れ、できものがある 等)
  • 不正出血(月経時以外の出血、性交後の出血、閉経後の出血、便や尿に血が混じるなど)
  • 腹部の痛み(排便痛、下腹部痛や下腹部の違和感 等)
  • 日常生活に支障をきたすほどの更年期症状がある(更年期障害)
  • 排尿の異常(尿が漏れる、尿が出にくい、頻尿、排尿時痛 等)
  • 便秘
  • 肌あれ
  • 性交痛
  • 腰痛 など

主な産婦人科疾患

頸管ポリープ、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜増殖症、子宮内膜ポリープ、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣腫瘍、細菌性腟症、老人性腟炎、更年期障害 など

更年期

更年期とは、日本人女性の平均閉経年齢(50.5歳)とされる前後5年間、主に45~55歳の世代の方になります。閉経を迎えるとエストロゲン(女性ホルモンの一種)が急激に減少していきます。これによってホルモンのバランスは崩れていくほか、本人の性格や体質、環境要因なども合わさるなどして、明確な病変がなくても自律神経症状や精神神経症状などがみられるようになります。これらを更年期症状というのですが、症状の現れ方というのは人それぞれです。つまり軽度な方もいれば、重度な方もいます。なお後者の場合で、日常生活に支障をきたしている状態になると更年期障害と診断されます。

更年期外来では、このような更年期障害の患者様を対象としています。ただ、その症状というのは多種多様で、別の病気でもみられる症状というのもあります。例えば、更年期障害だと思っていたのが、他の疾患を発症したことによる一症状だったということも少なくありません。したがって、更年期障害でよくみられる症状だからと決めつけてしまうのではなく、産婦人科などの医療機関で一度検査を受け、診断をつけることが大切です。この場合、血液検査で血中のホルモン濃度を調べるなどして判定していきます。

更年期障害の主な症状

【身体の症状】

頭痛、めまい、ほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)、動悸、寝汗・発汗、むくみ、月経異常、尿失禁、性交痛、喉の渇き、ドライアイ、関節痛、しびれ、冷え、肩こり・腰痛、吐き気、下痢・便秘、胃もたれ、胸やけ など

【こころの症状】

イライラ感、不眠、不安感、うつ、意欲の低下、もの忘れ など

治療について

更年期障害と診断されると速やかに治療が必要となりますが、一般的にはホルモン補充療法(HRT)が行われます。これは閉経などによって不足しているエストロゲンを補充していくことで、更年期症状を抑えていくということになります。このほか、医師が必要と判断した場合に漢方薬や向精神薬を併用することもあります。また健康保険適応でプラセンタ注射を行うこともあります。

思春期

第二次性徴が出現し、女性であれば乳房の発育、陰毛の発生、初経などがみられる時期で主に11~18歳の時期が思春期にあたると言われています。(思春期は)このような身体の成長に心の成長が追いつかなくなるなど不安定な時期でもあります。

思春期から月経は始まるわけですが、それにまつわる症状(月経痛、月経前症候群、月経周期の異常、月経量の異常、不正性器出血 等)が日常生活に影響するほか、精神面では自我意識の芽生え、価値観に変化がみられるなどして、精神的な不安等によって体調不良になるということもあります。

当クリニックでは、このような思春期特有の症状、悩み事につきましても思春期外来で対応いたします。10代女性にとって産婦人科に通うというのは敷居が高いと思われるかもしれませんが、欧米では10代女性が通院することは特別なことではありません。また、ご自身の身体について理解する機会でもあります。なお診察は女性医師が対応しますが、その際に内診(性器を調べる検査)が必要となったとしても、場合により経腹超音波検査で原因を特定していくことも可能です。

些細なことなので恥ずかしいと思わずに気になることがあれば、お気軽にご受診ください。なお来院の際は、ご家族の方の同伴につきましても遠慮なくお申し出ください。

思春期の女性がよく歌える症状やお悩み(例)
  • お腹がすぐに痛くなる
  • 下痢、便秘が続く
  • 朝起きられず、午前中調子が悪い
  • 立ちくらみ、立っていると気分が悪い
  • 気を失って倒れてしまうことがある
  • 体が重たくて、だるい
  • 顔色が悪く、食欲も無い
  • 心臓の拍動が速くなる
  • よく頭痛がする
  • 下腹部や腰が頻繁に痛む
  • 原因不明の体調不良に悩んでいる
  • ダイエットで体調を崩した
  • 胸が大きくならない 等

性感染症

性感染症は→こちら

月経(生理)不順

正常な月経周期とは、25~38日周期で月経が来るとされ、その範囲内で起きる変動は6日以内の場合としています。この範囲外にあると月経不順とされます。

この月経不順の中でも24日以内で発来する月経を頻発月経と言います。原因としては、ホルモンバランスの乱れ(ストレス 等)のほか、無排卵性周期症や黄体機能不全などの病気が原因という可能性もあります。

また39日以上3ヵ月未満の周期で月経が発来する場合を希発月経と言います。この場合、何らかの病気(多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症)やホルモンバランスの乱れ(ストレス、過度なダイエットや運動 等)などが原因として挙げられます。

さらに3ヵ月以上月経が来ない場合、続発無月経と呼ばれます。この場合もホルモンのバランスが崩れる、何らかの病気(卵巣や子宮の疾患、甲状腺や副腎皮質の異常、糖尿病 等)を発症している、薬剤の影響(抗がん剤の副作用)などによって引き起こされるとしています。

月経困難症(生理痛)

月経が来る直前、もしくは月経が始まると共に現れる症状のことで、その痛みなどから日常生活に支障をきたしている場合を月経困難症と言います。主な症状は、下腹部痛、腰痛、頭痛、吐き気、腹部膨満感などです。発症の原因は2つあるとされ、機能性月経困難症と器質性月経困難症に分けられます。

機能性とは、原因疾患がなくても上記の症状がみられるタイプです。主に子宮全体がまだ成熟していない思春期から20代前半の女性によくみられるのが特徴で、子宮収縮物質であるプロスタグランジンが過剰に分泌している、あるいは成長途上で子宮頸管が狭いことで月経血が少量しか出ていないなどが挙げられます。

一方の器質性は、何かしらの病気に罹患していることで引き起こされている月経困難症になります。具体的には、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、骨盤内炎症の患者様にみられやすく、子宮奇形などが原因になることもあります。

子宮筋腫

子宮の筋肉の層の一部に発生する良性腫瘍(コブのような塊)のことを子宮筋腫と言います。発生の原因ですが、筋肉となるべく細胞が何らかの原因によって筋腫に成長することで発症すると言われています。なお子宮筋腫が大きくなる際はエストロゲンが関与しているとしています。発生部位の大半は子宮体部ですが、わずかながら子宮頸部、子宮腟部に発生することもあります。なお、子宮筋腫は多発することが多いですが、どの部位で発症しても悪性化することは稀です。

よくみられる症状ですが、筋腫の大きさや発症部位によって異なります。具体的には、鉄欠乏性貧血、不正出血、月経困難症、過多月経、不妊がみられるほか、下腹部に腫瘤やしこり・痛み、腰痛、頻尿、便秘等が現れることもあります。

また同疾患は筋腫が発育していく方向によって、粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫の3つのタイプに分類されますが、そのうち7割程度が筋層内筋腫の患者様です。ちなみに筋層内筋腫は、子宮筋層内に発生するもので、上記の症状がみられます。子宮内膜の直下に発生するのが粘膜下筋腫になります。同タイプは月経時の出血が多量化するほか、激しい月経痛もみられます。また子宮漿膜の直下に発生するのが漿膜下筋腫です。この場合、無症状なことが多いですが、茎捻転が引き起こされると急性腹症の症状が出ます。

子宮内膜症

子宮内膜によく似た組織が何かしらの原因によって、子宮内腔以外の場所に入り込んで増殖するなどして、月経の度にそこから出血を繰り返すようになる病気を子宮内膜症と言います。発生しやすい部位は、卵巣あるいは卵管、ダグラス窩、腹部の内側を包む腹膜など子宮の周囲で起きることが多いです。このように子宮の中以外の場所で出血することによって、臓器に炎症、もしくは臓器同士の癒着などがみられるようになります。

主な症状は、月経痛が激しい(月経困難症)、性交痛、排便痛などで、癒着の状態がひどくなれば不妊を引き起こすこともあります。

原因に関しては特定されていませんが、子宮内膜の発育を促進させるエストロゲンが関係しているとされ、これが増殖することで発症していくと言われています。そのため、エストロゲン(女性ホルモンの一種)が多く分泌しやすい世代(20~30代)に発症しやすくなります。閉経を迎えるとエストロゲンの分泌が減少するので、発症リスクは低くなります。

子宮がん検診

子宮に発生するがんを総称して子宮がんと呼びますが、主に子宮頸がんと子宮体がんがあります。当クリニックでは、どちらのがん検診にも対応しています。名古屋市のクーポンを使用される方は、超音波代金は無料で施行しております。

なお名古屋市子宮がん検診クーポンの対象となるのは、市内在住の20歳以上の女性(今年度で20歳になる方も含む)で前年度に子宮がん検診を受けていない方になりますが、その中でも職場等で子宮がん検診を受ける機会がない方としています。

この場合、まず子宮頸がん検診での問診から医師が必要と判断し、検査を受ける方が同意をすれば子宮体がん検診も受診することになります。安価な費用で行えるので、対象となる方はその都度受けられるようにしてください。なお、対象外の方であっても全額自己負担にはなりますが、当クリニックでどちらの検診も受けられます。

子宮頸がん検診

子宮頸がんは、子宮の下部にある子宮頸部(子宮の入口)に発生するがんのことを言います。HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することで発症します。主に性行為によって感染しますが、その大半は感染しても持続しないのでがん化することはないのですが、何らかの原因によって感染が持続する、免疫力が低下しているという場合に発症するようになります。

子宮頸がん検診について
子宮頸がん検診では、問診・視診(内診)を行った後に頸部細胞診を行います。これは、特殊な器具(ブラシ、綿棒 等)を子宮頸部に挿入し、擦るなどして細胞を採取します。その結果、詳細な検査が必要であれば、コルポスコピー(腟拡大鏡)で子宮頸部を観察し、異常所見の有無に関係なく、子宮頸部の組織を生検鉗子やキューレットゾンデなどで一部採取し、顕微鏡で詳細を確認して診断をつけていきます(頸部組織診)。

子宮体がん検診

子宮体がんは、子宮の上部である子宮体部に発生するがんですが、子宮体部の内側である子宮内膜に発生することから子宮内膜がんとも呼ばれます。原因は不明とされていますが、エストロゲン(女性ホルモンの一種)が深く関わっていると言われています。また、肥満の方、出産未経験の方、タモキシフェン内服治療中の方、エストロゲン製剤の使用をしている方は、リスク因子があるとしています。

主な症状ですが、無症状ということもありますが、多くは不正出血があります。とくに閉経後にみられる場合は要注意です。このほか、おりものが茶褐色で悪臭を放つ、下腹部に痛み、腰痛が現れることもあります。なお子宮体がんは、50代の女性が最も発症しやすく、40~60代が好発しやすい世代となっています。

子宮体がん検診について
名古屋市が実施する子宮がん検診でなければ、子宮体がんのみの検診も可能です。この場合も問診や視診を行います。経腟超音波にて確認後、子宮内腔に細長い擦過用器具を挿入し、子宮内膜の細胞を擦りつけるように採取していきます(軽度の痛みや出血がみられることもあります)。詳細は顕微鏡で調べ、前がん病変やがん細胞の有無などを確認していきます。

その結果、陽性もしくは擬陽性、陰性でも子宮体がんの症状を訴えている場合は、子宮内膜組織診を行います。組織診では、主に吸引法にて子宮内膜の一部組織を採取します。採取後は、顕微鏡で検体を調べ、診断します。

不妊症

妊娠を希望する男女のパートナー(夫婦 等)が、避妊をせずに1年以上性生活を続けているにも関わらず妊娠していない状態を不妊症と言います。原因としては、男性に原因がある場合(男性不妊)、女性に原因がある場合(女性不妊)、あるいはその両方ともに原因があるというケースもあります。当クリニックは、不妊治療を専門とするクリニックではございません。高度生殖医療(体外受精・顕微授精)は行っておりませんので予めご了承ください。

不妊検査

検査の前にまず問診票に必要事項を記入し、それを確認した医師から質問をいくつか受けます。

その後、女性の場合は内診台に上がって、内診します。これによって、腟のほか、卵巣や子宮の様子や痛みなど自覚症状の有無もみていきます。また内診に続いて経腟超音波検査も行い、子宮や卵巣の実際の状態も確認いたします。そのほか、卵管性不妊の可能性をみるためのクラジミア検査、血液検査によるホルモン検査(排卵障害の原因を調べる、卵巣機能の状態をみるAMH 等)、感染症(B・C型肝炎、梅毒、HIV 等)罹患の有無なども調べていきます。

男性につきましては、精液検査は必須です。採取した精液を顕微鏡で確認し、精子の濃度や運動率を調べます。

不妊治療

当クリニックではタイミング法と配偶者間人工授精(AIH)を行っています。

タイミング療法とは
タイミング療法とは、妊娠がしやすくなる時期とされる排卵日を可能な限り正確に予想し、その近辺とされる日に性行為をすることで自然妊娠の可能性を高くしていくという手法になります。そのためには、常に基礎体温を計測していき、排卵日が近いとされる日に当クリニックで経腟超音波(エコー)検査を行い、その際に画像で確認された卵胞のサイズを計測します。これによって排卵日を医師が予想し、指示された日に性交をしていくという内容になります。

なお自然周期では、妊娠に至らないという場合は、排卵誘発剤を用いて受精確率を上げていくという方法もあります。これらタイミング療法を半年~8ヵ月程度続けても効果がみられないという場合は、人工授精による不妊治療となります。

人工授精とは
採取した男性の精液から運動性が良いとされる精子だけを集め、カテーテルを介して子宮腔に注入するというのが人工授精です。この場合もタイミング療法と同様に排卵日を予測し、妊娠いやすい時期を算出し、用手的に採取した精液を洗浄、濃縮していきます。その後、女性の子宮腔に精子を注入して終了となります。身体に負担がかかるものではないので、何度でも治療をすることは可能ですが、実際には5回程度実施しても妊娠の兆候がみられない場合は、他の不妊治療を検討した方がよいです。別の治療法による不妊治療を希望されるのであれば、高度生殖医療(体外受精・顕微授精)を行っている医療機関を紹介いたします。