腟性交(セックス)もしくは、その類似行為(オーラルセックス、アナルセックス 等)によって粘膜や皮膚が接触し、それによって感染する病気のことを総称して性感染症(STD:Sexually Transmitted Diseases)と言います。
当クリニックで行っている性感染症スクリーニングは下記の項目です。
細菌の一種である、クラジミア・トラコマティスに感染することで発症する性感染症です。セックス(腟性交)だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスでも感染します。1~4週間程度の潜伏期間を経てから発症しますが、約80%が無症状であるため自覚しにくいのが特徴です。女性が感染する性感染症のとしてはもっとも頻度が高いものです。
不正出血、おりものは黄色っぽくて量が多い、下腹部痛(月経痛のような痛み)などの症状がみられます。なお放置が続けば、異所性妊娠や不妊、肝周囲炎などを引き起こすこともあります。
なおクラミジアは、喉でも感染しますので、オーラルセックスやアナルセックスによって性器以外の場所で発症することもあります。
淋菌と呼ばれる細菌に感染することで発症する性感染症です。主に性行為(オーラルセックス、アナルセックス含む)によって感染します。2~7日程度の潜伏期間を経てから発症します。クラミジアとともに比較的頻度の高い性感染症です。感染力が強く、男性の場合は症状が強く出ますが、女性は症状が軽度もしくは無症状のため気づきにくいです。症状がある場合は、おりもの色が異常(緑黄色 等)、尿道から排膿などがみられます。症状が出にくく自覚されないことも多いため注意が必要です。また治療をしなければ病状を進行させ、子宮内膜炎や卵管炎を発症させるなどして、不妊症などを引き起こすこともあります。
なお淋菌もクラミジアと同様に、喉や直腸でも感染しますので、オーラルセックスやアナルセックスによって性器以外の場所で発症することもあります。
梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌に感染することで発症する病気が梅毒です。主に性行為によって、口内や膣などの粘膜から入り込んで感染するようになります。
1ヵ月程度の潜伏期間を経て、性器や口などの感染部位に痛みのないしこり、できものがみられるようになります(第1期)。ただこれらの症状は、何の治療をしなくても数週間で消えていきます。その後、感染から3ヵ月程度経過すると全身(手のひら、足底を含む)に発疹がみられるようになります(第2期)。この場合も、これといった治療をしなくても数週間~数ヵ月で消えるようになります。ちなみに梅毒の患者様の大半は、第2期の時点で治療をするようになります。
それでも放置が続けば、数年~数10年程度は何も症状が現れない時期が続きますが、その間も着実に病状は進行しています。そして、全身にゴムのような感触をした腫瘤が発生するほか、大動脈瘤や神経障害などがみられることもあります。このような状態にならないためにも異常に気づいたら早めにご受診されるようにしてください。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染することで発症する性感染症です。感染経路としては、性行為による粘膜や傷口からの同ウイルスの侵入ということもありますが、血液・体液感染、母子感染というケースもあります。
感染から2~4週間程度経過すると、インフルエンザに似た症状(発熱、倦怠感、筋肉痛、咽頭痛 など)が現れるようになります。ただこれらの症状は、数週間程度で自然と消えるようになります。その後は症状がみられない無症候期が数年~数十年続きますが、その間も確実に病状が進行していきます(HIVは増殖し、CD4陽性T細胞が減少)。この間にHIV感染症に気づかないで症状を進行させると、やがて免疫力は低下していきます。これによって、健康体であれば何の事はない病原体であっても感染して発症してしまう日和見感染症や悪性腫瘍などの症状がみられるようになります。この状態をエイズ(AIDS)と言います。
ちなみにHIV感染症は、咳やくしゃみ、トイレあるいは食器の共用などで感染することはありません。
トリコモナス原虫という寄生虫に感染することが原因の性感染症になります。なお感染経路につきましては、性行為だけでなく、衣類(タオル 等)や便器、浴場などの共用によって感染することもあります。
感染後は、1~3週間ほどの潜伏期間を経てから発症します。女性の場合は、外陰部に強いかゆみがみられるほか、悪臭を放つ白~黄色の泡状のおりものが増量していきます。また性交痛や排尿時痛が起きることもあります。一方男性では、頻尿、排尿時痛、前立腺炎の症状が出ることもありますが、無症状というケースも多いです。
B型肝炎ウイルスに感染することで発症する感染症です。同ウイルスは、血液、精液、腟分泌液などに多く含まれます。そのため感染経路としては、性行為のほか、母子感染、注射器の使い回しなどが挙げられます。なおB型肝炎の場合、大きく急性と慢性に分けられます。
急性B型肝炎は、主に性行為や注射針の使い回しなどによって起きることが多いです。この場合、1~6ヵ月間ほどの潜伏期間を経てから発症します。主な症状は、微熱、食欲不振、嘔吐・吐き気、みぞおちの痛み、お腹の張りなどで、黄疸もみられるようになります。上記の症状に関しては、1ヵ月ほどで治まるようになります。ただ稀に劇症化することもあります。
また慢性B型肝炎は、母子感染によって子供が感染したケース、6歳未満でB型肝炎ウイルスに感染したという場合になりやすいと言われています。自覚症状が出ないこともありますが、放置が続けば肝硬変や肝がんを発症することがあります。そのため、早期に発見して治療を行うことも大切です。
感染の原因は、C型肝炎ウイルスになります。同ウイルスは血液を介して感染することが大半です。そのため、臓器移植、注射器の使い回し、輸血、入れ墨などが感染経路に挙げられます。性行為による感染に関しては、B型肝炎と比較すると少ないです。
感染した際にみられる症状としては、全身の倦怠感、食欲の低下、発熱などがあります。上記の症状が治まると自覚症状が起きない期間がしばらく続くようになります。なお病状が進行すると、肝硬変や肝がんになっていきますが、肝硬変を発症するようになると、むくみ、腹水、黄疸などが現れるようになります。
マイコプラズマ・ジェニタリウムに感染することで発症する性感染症です。子宮頸管炎や骨盤内炎症性疾患の原因になると言われております。無症候であることも少なくありません。
真菌(カビ)の一種であるカンジダ属が繁殖することで性器に炎症がみられている状態を性器カンジダ症と言います。腟性交(セックス)などの性行為によって感染することもありますが、常在菌でもあるので健康な方でも体内に存在しています。つまり体の免疫力が低下するなどして、同菌が繁殖して発症するケースもあります。
主な症状ですが、陰部に強いかゆみが現れるほか、おりもの色が白く、ヨーグルト状になるなどして、量も増えるようになります。さらに性器に炎症や性交痛がみられる場合もあります。
単純ヘルプスウイルス(HSV)の1型もしくは2型に感染している性感染症のことを性器ヘルペスと言います。主に1型は口唇に感染し、2型は性器に感染します。感染経路ですが2型の場合は性行為によって感染することがほとんどです。1型は必ずしも性行為によって感染するというわけではありませんが、オーラルセックスによって感染、発症することがあります。感染後、3~7日間の期間を経て発症するようになります。
主な症状ですが、1型の場合は口の周りや口腔内に水疱や潰瘍がみられるようになります(性器に発症することもあります)。2型の場合は、性器に水疱や潰瘍が現れるようになります。なお2型では、強い症状がみられることから排尿困難や歩行困難などになることもあります。
ちなみにこれら症状が改善したとしても同ウイルスは、体外に排出されないまま、神経節に潜伏し続けます。そのため、疲労などから免疫力が低下した際に再発することがあります。ただ1型にしても2型にしても、初感染時よりも症状は軽度です。
ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症する性感染症になります。主に性行為時に皮膚や粘膜の小さな傷から同ウイルスが侵入することで感染します。一口にHPVと言いましても様々な型があるわけですが、尖圭コンジローマはローリスク型(6・11型)とされるものです(ハイリスク型は子宮頸がんの原因となる、16・18・31・52・58型 等)。
3週間~3ヵ月程度の潜伏期間を経て発症します。主な症状は、外陰部、会陰部、肛門周囲にみられる、カリフラワー状(もしくは鶏冠状)のいぼです。自覚症状は、あまりないとされています。そのため、性器にできものがあるという感じで気づくこともありますが、発症部位や大きさによっては、痛みやかゆみが出ることもあります。なお妊娠中に発症するといぼが大きくなりやすいという特徴もあります。
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