性感染症(STD)とは

膣性交(セックス)もしくは、その類似行為(オーラルセックス、アナルセックス 等)によって粘膜や皮膚が接触し、それによって感染する病気のことを総称して性感染症(STD:Sexually Transmitted Diseases)と言います。

主な男性の性感染症

淋菌性尿道炎

淋菌と呼ばれる細菌に感染することで発症する性感染症です。主に性行為(オーラルセックス、アナルセックス含む)によって感染します。2~7日程度の潜伏期間を経てから発症します。
感染力が強く、男性の場合は症状が強く出ます。具体的には、排尿時痛や尿道からの排膿です。なお淋菌は、喉や直腸でも感染しますので、オーラルセックスやアナルセックスによって性器以外の場所で発症することもあります(咽頭淋菌等)。

クラミジア性尿道炎

細菌の一種である、クラジミア・トラコマティスに感染することで発症する性感染症です。セックス(膣性交)だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスでも感染します。1~4週間程度の潜伏期間を経てから発症します。
主な症状は、尿道の炎症ということになりますが、症状が軽度なことが多いです。それでも男性では、尿道の不快感や軽度な排尿時痛、尿道からの分泌物などがみられます。

非クラミジア性非淋菌性尿道炎

クラミジアや淋菌が病原体ではない尿道炎のことを非クラミジア性非淋菌性尿道炎と言います。この場合の原因となる病原体については、マイコプラズマ・ジェニタリウム、腟トリコモナス原虫、ウレアプラズマ・ウレアリチカム、インフルエンザ菌、アデノウイルス、ヘルペスウイルスなどがあります。感染経路としては、セックスやオーラルセックスが挙げられ、1~5週間程度の潜伏期間を経て発症します。

主な症状は、尿道の不快感、軽度な排尿時の痛み、尿道から排出される膿などの分泌物です。放置が続けば、男性では精巣上体炎や前立腺炎などを発症することもあります。女性では、おりものの増加や性交痛などがみられます。いずれにしても、クラミジア性尿道炎と同じような症状が現れることがほとんどなので、治療法も同様となります。

梅毒

梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌に感染することで発症する病気が梅毒です。主に性行為によって、口内や膣などの粘膜から入り込んで感染するようになります。

1ヵ月程度の潜伏期間を経て、性器や口などの感染部位に痛みのないしこり、できものがみられるようになります(第1期)。ただこれらの症状は、何の治療をしなくても数週間で消えていきます。その後、感染から3ヵ月程度経過すると全身(手のひら、足底を含む)に発疹がみられるようになります(第2期)。この場合も、これといった治療をしなくても数週間~数ヵ月で消えるようになります。ちなみに梅毒の患者様の大半は、第2期の時点で治療をするようになります。

それでも放置が続けば、数年~数10年程度は何も症状が現れない時期が続きますが、その間も着実に病状は進行しています。そして、全身にゴムのような感触をした腫瘤が発生するほか、大動脈瘤や神経障害などがみられることもあります。このような状態にならないためにも異常に気づいたら早めにご受診されるようにしてください。

性器ヘルペス

単純ヘルプスウイルス(HSV)の1型もしくは2型に感染している性感染症のことを性器ヘルペスと言います。主に1型は口唇に感染し、2型は性器に感染します。感染経路ですが2型の場合は性行為によって感染することがほとんどです。1型は必ずしも性行為によって感染するというわけではありませんが、オーラルセックスによって感染、発症することがあります。感染後、3~7日間の期間を経て発症するようになります。

主な症状ですが、1型の場合は口の周りや口腔内に水疱や潰瘍がみられるようになります(性器に発症することもあります)。2型の場合は、性器に水疱や潰瘍が現れるようになります。なお2型では、強い症状がみられることから排尿困難や歩行困難などになることもあります。

ちなみにこれら症状が改善したとしても同ウイルスは、体外に排出されないまま、神経節に潜伏し続けます。そのため、疲労などから免疫力が低下した際に再発することがあります。ただ1型にしても2型にしても、初感染時よりも症状は軽度です。

尖圭コンジローマ

ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症する性感染症になります。主に性行為時に皮膚や粘膜の小さな傷から同ウイルスが侵入することで感染します。一口にHPVと言いましても様々な型があるわけですが、尖圭コンジローマはローリスク型(6・11型)とされるものです(ハイリスク型は子宮頸がんの原因となる、16・18・31・52・58型 等)。

3週間~3ヵ月程度の潜伏期間を経て発症します。主な症状は、外陰部、会陰部、肛門周囲にみられる、カリフラワー状(もしくは鶏冠状)のいぼです。自覚症状は、あまりないとされています。そのため、性器にできものがあるという感じで気づくこともありますが、発症部位や大きさによっては、痛みやかゆみが出ることもあります。なお妊娠中に発症するといぼが大きくなりやすいという特徴もあります。

HIV感染症(エイズ)

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染することで発症する性感染症です。感染経路としては、性行為による粘膜や傷口からの同ウイルスの侵入ということもありますが、血液・体液感染、母子感染というケースもあります。

感染から2~4週間程度経過すると、インフルエンザに似た症状(発熱、倦怠感、筋肉痛、咽頭痛 など)が現れるようになります。ただこれらの症状は、数週間程度で自然と消えるようになります。その後は症状がみられない無症候期が数年~数十年続きますが、その間も確実に病状が進行していきます(HIVは増殖し、CD4陽性T細胞が減少)。この間にHIV感染症に気づかないで症状を進行させると、やがて免疫力は低下していきます。これによって、健康体であれば何の事はない病原体であっても感染して発症してしまう日和見感染症や悪性腫瘍などの症状がみられるようになります。この状態をエイズ(AIDS)と言います。

ちなみにHIV感染症は、咳やくしゃみ、トイレあるいは食器の共用などで感染することはありません。

性器カンジダ症

真菌(カビ)の一種であるカンジダ属が繁殖することで性器に炎症がみられている状態を性器カンジダ症と言います。膣性交(セックス)などの性行為によって感染することもあります(外因性感染)が、常在菌でもあるので健康な方でも体内に存在しています。つまり体の免疫力が低下するなどして、同菌が繁殖して発症するケースもあります。

主な症状ですが、男性は無症状もしくは性器にかゆみがみられるようになります。人によってはペニスの先端が赤い、水疱が発生するといったこともあります。

ケジラミ

ケジラミは、主に陰毛(もしくは胸毛 等)に寄生する吸血性の昆虫のことです(成虫の体長は約1~2mm)。これに感染することで引き起こされる様々な症状のこともケジラミと呼びます。感染経路は性行為によるものが多いですが、シーツなどの寝具類やタオルなどを共用することなどで感染することもあります。主な症状ですが、陰部のかゆみです(男女差はありません)。症状が強く出た場合は、掻き壊すなどして症状が悪化してしまうこともあります。ただ人によっては、かゆみがほぼ出ないというケースもあります。

肝炎 (A型 B型 C型)

A型肝炎

A型肝炎ウイルスに感染することで発症する感染症になります。同ウイルスは便中に排泄されるため、衛生環境がよくない場所での飲食によって感染することが多いです。ただ性行為(アナルセックス、オーラルセックス 等)が感染原因になることもあります。

感染後は、2~7週間程度の潜伏期間を経てから発症します。よくみられる症状は、発熱、吐き気・嘔吐、全身の倦怠感などで、これらに続いて黄疸(眼球や皮膚が黄色っぽくなる)も見受けられるようになります。多くは、安静に過ごすことで自然と治癒していくようになります。

B型肝炎

B型肝炎ウイルスに感染することで発症する感染症です。同ウイルスは、血液、精液、膣分泌液などに多く含まれます。そのため感染経路としては、性行為のほか、母子感染、注射器の使い回しなどが挙げられます。なおB型肝炎の場合、大きく急性と慢性に分けられます。

急性B型肝炎は、主に性行為や注射針の使い回しなどによって起きることが多いです。この場合、1~6ヵ月間ほどの潜伏期間を経てから発症します。主な症状は、微熱、食欲不振、嘔吐・吐き気、みぞおちの痛み、お腹の張りなどで、黄疸もみられるようになります。上記の症状に関しては、1ヵ月ほどで治まるようになります。ただ稀に劇症化することもあります。

また慢性B型肝炎は、母子感染によって子供が感染したケース、6歳未満でB型肝炎ウイルスに感染したという場合になりやすいと言われています。自覚症状が出ないこともありますが、放置が続けば肝硬変や肝がんを発症することがあります。そのため、早期に発見して治療を行うことも大切です。

C型肝炎

感染の原因は、C型肝炎ウイルスになります。同ウイルスは血液を介して感染することが大半です。そのため、臓器移植、注射器の使い回し、輸血、入れ墨などが感染経路に挙げられます。性行為による感染に関しては、B型肝炎と比較すると少ないです。

感染した際にみられる症状としては、全身の倦怠感、食欲の低下、発熱などがあります。上記の症状が治まると自覚症状が起きない期間がしばらく続くようになります。なお病状が進行すると、肝硬変や肝がんになっていきますが、肝硬変を発症するようになると、むくみ、腹水、黄疸などが現れるようになります。