泌尿器は、尿を作り出し、その尿を体外へ排出するまでに携わる器官を総称した呼び名で、主に腎臓、尿管、膀胱、尿道が含まれますが、性器についても診療の対象となります。これらに何らかの症状がみられる方の中には、デリケートゾーンに及ぶことから受診を控えてしまうという方も一部でみられます。ただ単に我慢をしているだけでは、症状は改善しないどころか悪化させてしまうこともあるので、気づいたら勇気を出して速やかにご受診ください。
なお男性と女性では、性器の構造が大きく異なりますが、男性であれば、陰茎や陰嚢などの外性器、精巣(睾丸)や前立腺などの内性器も対象になります。また女性では、膀胱炎や過活動膀胱などの症状がよく見受けられます。以下のような症状に心当たりがあれば、一度ご受診ください。
【男女共通の症状】
【男性がよく訴える症状】
【女性がよく訴える症状】
なお当診療科は、日本泌尿器科学会が認定する泌尿器専門医である医師が担当しますが、女性の患者様で、性感染症が疑われる、泌尿器科では恥ずかしいという場合は、日本専門医機構が認定する産婦人科専門医である女性医師も在籍しておりますので、当クリニックの産婦人科での対応も可能です。お気軽にご相談ください。
一般的に膀胱炎と呼ぶ場合、急性膀胱炎を指すことが多いです。原因の多くは尿道から細菌(大半が大腸菌)が侵入し、感染することで発症するようになります。主な症状は、頻尿、排尿時の痛み、尿が濁る、残尿感、血尿などです。
特徴としては、男性と比べて尿道が短いとされる女性の患者数が多く、なかでも20~30代の世代によくみられます。なお若い世代の女性の発症原因としては、性行為に関連して発症することが多いとされていますが、寒冷による刺激、疲労などのストレス、尿意の我慢、免疫機能の低下といったことが引き金となって、細菌に感染しやすくなって発症するとしています。また急性膀胱炎は再発しやすく、約半数の患者様に再発すると言われています。
尿路とは、尿が作られて排出されるまでの器官を言います。具体的には、腎臓、尿管、膀胱、尿道を総称した呼び名になります。これら部位で尿成分が塊となって結石を形成している状態が尿路結石です。発生した部位によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と診断されます。
結石は尿中に含まれる物質である、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸、リン酸マグネシウムアンモニウムなどが固まって作られるようになります。主な症状ですが、部位によっては無症状ということもありますが、疝痛発作(背中や腰、脇腹、下腹部にかけての激痛)や血尿などの症状がみられます。ちなみに結石は腎臓もしくは膀胱で作られますが、腎臓で形成された結石(腎結石は自覚症状が少ない)が尿管に落ちていき、尿路を塞ぐとなれば、上記の症状がみられるようになります。
また膀胱結石は、尿管から結石が落ちることもあれば、膀胱内で結石が作られることもあります。さらに尿道結石は、膀胱より上の部位から結石が下りていき、尿道に結石がはまっている状態です。これらの疾患であれば、血尿、排尿障害、排尿時に痛みなどの症状がみられるようになります。
男女比でいえば男性患者数が多く、上部尿管結石(腎結石、尿管結石)と診断される患者様が大半を占めています。
前立腺は男性特有の臓器(クルミほどの大きさ)で、膀胱の出口付近で尿道を取り囲むような位置にあります。ここでは、精液の一部とされる前立腺液を分泌するなどの働きをします。この前立腺が何らかの原因によって肥大化し、尿路が閉塞するなどして様々な症状が現れている状態を前立腺肥大症と言います。
主な症状は、頻尿、残尿感、夜間頻尿、尿の勢いがよくない、尿線途絶(尿が途切れる)などで、腹部に力を入れないと尿が排出できないということもあります。
なお原因については完全に特定しているわけではありません。ただ男性ホルモンが関係しているとされ、主に加齢による同ホルモンの変化によって引き起こされているのではないかと言われています。そのほかにも、遺伝的要因や食生活の影響なども考えられるとしています。ちなみに同疾患は50代から患者数が増え始め、現在は日本人の55歳以上の男性の約2割の方に前立腺肥大症の何らかの症状がみられると言われています。
何の前触れもなく強い尿意(尿意切迫感)に襲われ、この状態が繰り返されている状態を過活動膀胱(OAB)と言います。尿意切迫感のほかに頻尿、切迫性尿失禁(我慢できずに尿を漏らす)などもみられます。
同疾患は男女に関係なく、日本では40歳以上の8人に1人の割合でOABの症状がみられるとされ、原因は大きく神経因性と非神経因性に分けられます。前者(神経因性膀胱)は中枢神経(脳・脊髄)や末梢神経(主に脊髄から膀胱まで)が病気やケガなどによって損傷され、それによって膀胱や尿道が障害を受けることで、排尿障害がみられている状態を言います。原因疾患としては、脳血管障害(脳梗塞、脳出血 等)、パーキンソン病、脊髄損傷などが挙げられます。一方の後者は神経の障害とは関係なく発症するOABで、加齢や精神的ストレスのほか、男性であれば前立腺肥大症の患者様、女性であれば閉経や骨盤臓器脱などに伴って発症することもあります。
前立腺に発生するがんで、主に50歳以上の男性に起きやすいとされるがんです。発生して間もない、いわゆる早期の段階では自覚症状が出にくいです。ある程度進行すると、排尿困難、残尿感、排尿時痛、血尿などの症状が、また尿管まで浸潤すると水腎症や腎後性腎不全がみられるようになります。さらに同がんは(骨、リンパ節、肺 等に)転移することで、骨折や脊髄麻痺などが起きることもあります。
発症の原因に関しては、遺伝的要因、加齢、日頃の食生活(欧米化の食事)、人種(黒人や白人が罹患しやすい)などが関係しているとされ、日本でも罹患する患者様が年々増えていることから食生活が影響しているのではないかとも言われています。
なお前立腺がんは、早期に発見することができれば、治癒しやすいがんとしても知られています。名古屋市では、同市内在住の50歳以上の男性を対象に1年に1回の頻度で検査(PSA)を安価な費用で行っています。これまで前立腺に症状がないという場合でも対象となる方は、ぜひ受診されるようにしてください。
名古屋市の「前立腺がん検診」は→こちら
膀胱の粘膜に発生するがん(上皮性悪性腫瘍)で、高齢の男性に発生しやすいことでも知られています。ちなみに全ての膀胱がん患者様の9割以上が50歳以上の方で、男女比は4:1で男性が多いと言われています。
主な症状ですが、発症間もない頃は、無症候性肉眼的血尿(痛みなどの自覚症状はない、見た目ではっきりわかる血尿)がみられます(顕微鏡的血尿のケース)。さらに膀胱が刺激を受けた際には、頻尿や排尿時痛などの症状が現れるようになります。また症状が進行した際の症状として、尿路閉塞(水腎症 等)や体重減少などの全身症状が出るようになります。
同疾患の発症リスクが高くなる要因としては、喫煙、薬剤(フェナセチン、シクロフォスファミド 等)の使用、芳香族アミン類など職業性の発がん物質への曝露などが挙げられます。痛みなどの症状がない血尿を確認した場合は、一度当診療科をご受診ください。
前立腺に炎症が発症する病気で男性特有の疾患になります。大きく急性と慢性に分けられますが、強い症状がみられるのは急性前立腺炎です。
急性前立腺炎の主な症状は、発熱(高熱)、排尿時痛、排尿困難などで、前立腺では、圧痛、腫大、熱感がみられます。この場合の原因は、細菌感染になりますが、原因菌としては大腸菌が最も多いと言われています。
一方の慢性前立腺炎は、原因菌を十分に排除することができなかった場合に再発、あるいは難治化するというケースもあれば、非細菌性の慢性前立腺炎(慢性骨盤痛症候群)の場合もあります。ちなみに全前立腺炎の患者様で最も多いタイプが非細菌性の慢性前立腺炎と言われています。主な症状は、会陰部の不快感、排尿時に起きる痛みや違和感などです。なお前立腺には明らかな異常がみられないことが大半です。非細菌性慢性前立腺炎の発症原因については、はっきり特定していませんが、骨盤底筋の過緊張や精神的ストレス等によって引き起こすこともあります。
大腸菌などの細菌に感染して発症する膀胱炎のように原因をはっきり特定することができない膀胱炎のことを間質性膀胱炎と言います。この場合も膀胱に炎症が起きるわけですが、それに伴って、尿意切迫感や頻尿、膀胱や尿道に不快感や痛みがみられるようになります。
女性の患者様が圧倒的に多く、男女比は1:5程度とも言われ、中高年女性が発症しやすいとも言われています。先にも述べた通り原因は不明としていますが、自己免疫疾患や膀胱粘膜上皮の異常、尿中物質が関係しているのではないかとも言われています。
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